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保健室に戻ると二人とも照れ笑いを浮かべている。うまくいったようだ。
机の上に置いたままの携帯を手に取ると、井本に電話をかけはじめる。
義行と徳一の方を向き、
「さぁ、お前らも早く帰りや。カギかけんで。」
「先生、ありがと。」
「イヤ、ええよ。仲良くしィや…」と、言った時に留守電に切り替わる。
無機質な声を聞きながら、片手でシッシッと外に行くよう合図を送り、
「ゴメン、俺やけど今日はアカンようになった。‥‥じゃ。」
電話を切って留守電で良かったと思う。余計な説明をしないで済む分、気持ちがざわつかないで済む。
中途半端に意識しないよう、携帯の電源を切る。
後ろから義行が心配そに
「先生‥」
「まだ居ったンか、ホンマに早よぉ帰りや。」
新しいファイルを用意して鞄に詰める。
着替え始めながら、何か言いたげな義行に
「気にすんな、俺これから仕事やからな、しゃぁないねン。」
俺より哀しそうにみえる。
義行の前で電話したのを後悔した。
「わかった‥ほなっ帰るわ。‥また今度話してや。」
「‥おん、気ィ付けて。」
二人が出て行った後に
‥俺自身かて次がある自信ひとつもないけど、
アイツやったらきっとわかってくれる。
だから迷わんと断りの電話をかける事ができたンや…
大きく深呼吸をして気持ちを切り替える。
「ヨッシャ、いこか。」
鍵をかけて職員室に向かう。
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