季節外れの‥‥7

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リビングのソファーに深く腰掛け、昔を思い出す。 ‥そういや、いっつも俺から誘ってた気がすんな。 俺と出逢って、アイツの人生無茶苦茶にしたンやろか? もしかすると、俺が泣かしてばっかでアイツを苦しめてンやろか? 頭ン中が涙を堪えたアイツの顔で一杯になる。 藤原と離れてから12年間、アイツと俺はどこかで呼びあってたンやろか? 俺は、そう思いたいねん。 高校の時は、一番近くに居れるだけよかった。それやのに、俺はアイツに大学行きを勧めた。 最後の夏休みなんかずっと図書館通いやった。元々、賢いヤツやったからやる気さえ出せば集中力が違ってた。 その傍で邪魔にならんようただ見守るしかなかった。 ノートに書き込み、参考書に眼をやる。そのひとつひとつの仕草が大好きやった。 シャーペンを指で廻す。 前髪に沿わすように指で弄る。 頬杖をついては考え込む。 時折訊こえる、低い声。 俺をみて、フワッと日だまりのように微笑み 「退屈やろ?」って顔をクシャクシャにして笑う。 ‥あの時間がずっと続く気がしてた。 模試の前には必ず俺に 「A判定やったら、井本デートしてや。」 抱きしめながらゆうてくれた。 とても力強くて、苦しくて、切なくて‥‥ ‥胸に突き刺さる‥‥ぬくもり ‥離したくなかった、ずっと感じてたかった。
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