季節外れの‥‥7

8/16
前へ
/343ページ
次へ
天満宮‥学問の神様やけど、俺は御詣りよりも行きたい所があった。 ‥星合池に架かる、愛嬌橋‥   橋の上で出逢った二人は結ばれる‥‥ きっと男女間の話かも知れんし、俺らには通用せんかもしれん。やけど、ちょっとだけ信じたかった。 アイツには何もゆわへンけど、俺にとって多分‥最初で最後の最高の恋人やから‥ 天神さんの境内は広く、 二人で手水場で浄めて、 二人で本殿に詣でて、 二人で絵馬を登竜門の側に奉納した。 それから、二人で橋を渡った。 ただそれだけの事。なんにも変わらへん。 梅の木をみて、 「東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな‥。‥‥やな感じやで。」 低い声でボソボソとゆう。 「何でやねん。有名な和歌とちゃうンか?」 「‥やって‥別れのやろ?」 俺の方に振り向き泣きそな顔で項垂れる。 「アホか!飛梅伝説があるやろー。逢いたい気持ちは何でも叶うンやで。」 「おん‥」 「腹減ったから飯でも食ぉや。」 そう言って手を引っ張って天神さんをあとにした。 ブラリと商店街を歩きながら、 「なに食う?」 「‥食べとうない‥。なぁ、‥」 「なんや、映画でも観る?」 うらめしそに揺らぐ瞳で俺を見る。ポケットに手を突っ込んで項垂れたまま、ブツブツと口ごもる。 言いたい事は判ってるのにはぐらかしてしまう。 俺の後ろを歩いているのに雰囲気で落ち込み具合がわかる。 笑いを堪えるのに必死だった。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加