44人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんやねンな。」立ち止まって笑うと、
「‥わかってるくせに‥」拗ねた口振りでボソボソとゆう。
「折角出て来たんやし、キタ行く?ミナミ行く?」
肩を並べて歩きながら尋ねる。
「‥俺、よう知らんからまかす‥」
「じゃぁ、希望はどんなとこがええ?」
「‥二人きりに‥‥なれたら‥それでかまへん‥‥」
消え入りそな小さな声が震えていた。
アイツの言いたい事が痛いぐらい伝わる。俺もおんなじ気持ちやし、早く抱き締めたかった。
人の疎らな川沿いを二人で歩き、一番人気の少ない青い地下鉄に乗り込み、ミナミに向かった。駅からあがると言わずと知れたホテル街。
人通りの途切れたところで中に入り、適当に部屋を選ぶ。
エレベーターで俺の陰に立つアイツが可愛くて、チョイチョイと指で呼ぶと恥ずかしそに前髪をいじり横に来る。
二人で手を繋いだまま部屋に入る。
「うっわぁー、こんな緊張したンは初めてやンなぁ。」そう言ってアイツを見ると、
「‥ぉん‥」入り口で俯いたままで突っ立っていた。
「大丈夫やょ、もう二人きりやし、いつものまんまでええって。」
ソファーに座ってサービスの一覧をみて、
「出前あるけどなんか食う?」
「‥ぉ‥ん、なぁ、やっぱり俺‥なんか‥な‥」
言葉に詰まり、突っ立ったままで震えている。
傍に行き頭をヨシヨシすると、床に涙がポタポタ落ちる。
「大丈夫やから‥怖かったらなんもせんでもかまへんし、TV観てカラオケして騒いだらええやン‥ゲームもあるみたいやし。‥‥正直、俺は二人で居れるだけでええから、泣かんとって‥」
「‥ちゃ‥ちゃうンや、俺なんか‥で、ホンマにええンか?‥こんなに、女々しいし‥暗いし‥‥鬱陶しいし‥‥‥‥男やし‥」
「でもお前は‥藤原やん。俺が好きな藤原やから‥お前がええ‥ってゆうより、お前しかアカン。お前しか見えてへん。」
抱き締めると肩に顔をうずめて泣きじゃくる。
大きいアイツが小さく思えて、可愛くて切なくて胸が痛いぐらい切実に離したくなかった。
最初のコメントを投稿しよう!