序章 損失は幸運に痛し

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「冗談だろ……」 まるで彼、嘉川 光夜(かがわ こうや)が口癖のように呟いたその言葉は、虚しくも夜の公園に響き渡る。 なぜ彼が今、夜の十二時を過ぎる頃に公園にいるかと言うと、 「……鍵が、まさか損失するとは……。我ながら馬鹿にも程がある」 嘆きに嘆くが、現状は一切変わりはしない。 親はなぜか五十歳過ぎてもラブラブで、今は海外旅行でロサンゼルスだ。 彼は高校生な上に夏休みの補修中なので行けなかったのである。その上の不幸である。 「ったくどーしよ。鍵屋でも呼ぶか……とは言っても金ねぇし」
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