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あまりにも気味の悪い笑い方をするものだから、僕はいつもなら仕方なく承諾していた頼みの綱を断ち切ってやった。
銀は意味が解らないというように縋りついてきて、僕はついニヤリと口の端を持ち上げた。
それを見た銀は不貞腐れたように、頬を風船みたいに膨らませた。
「ならば、交換条件だ」
「けちんぼ、人でなし、あーくーまーっ!」
「黙れ。伊佐谷銀のような人間に、僕以外が救いの手を差し伸べると思っているのか?」
「エンマひでぇーっ!」
相変わらずぶーぶーうるさい銀を無視して、僕は頬杖を突きながら窓の外を眺めた。
空は腹が立つほど、青く晴れ渡っていた。
あの二人はもう、出会えたのだろうか。
いや、もう少し後なのかもしれない。
まだそんなに時間は立っていないはずだ。
でも、上手くいけばいいと思う。
それに、願う。
大切な人が、笑ってさえいてくれれば、それ以外に何もいらない。
こんな臭い台詞を心の中とはいえ言うようになるとは、僕も変わったものだ。
きっと、いい意味での変化だ。
そう、信じたい。
……僕が好きになったのが、君でよかった。
「エンマ、なーにニヤニヤしてんだよぉー?」
「……誰もニヤけてなどいない。ただ…―――こういう形で終わるのも、悪くないと思っただけだ」
意味深に微笑む僕に、銀はまた気味悪いニヤケ面をしていた。
それすら気にならないほど、今の僕は清々しい気持ちになっていた。
この時、僕は生まれて初めて。
―――心の底から、笑った。
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