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「ハハ。その動き、変なんだけど。何それ、ロボットダンス?」
「う、るさいっ! 誰の所為だと、思ってん、の……っ」
「んー? そうだなー、間違いなく俺?」
ニッと歯を見せて笑うのは、私の大好きな人。
この一週間入院していたはずの怪我人。
仔犬のように無邪気で、素直に心から笑う人。
ずっと、逢いたかった人。
「結城……」
「ん。なに?」
まるで今まで何もなかったかのように笑う結城に、私の緩んだ涙腺は崩壊寸前だった。
それを知ってか知らずか。
ふにゃり、と崩れてしまいそうな笑顔を浮かべる結城は、穏やかな顔をしていた。
気が付くと、私は椅子に腰掛けている結城のすぐ傍まで歩み寄っていた。
「どしたの、その顔? そんなに俺がいなくて寂しかった?」
「……っるさい、馬鹿。あんたなんかいなくても、全然寂しくないもん」
「寂しくないもん、て……。子供みたいだな」
「だ、から、うっさいって言ってんのっ!」
バシバシと子供が駄々をこねるように、私は何度も結城の頭を叩き続けた。
それを何とも思っていないように、結城はニコニコしながらそれを無言で受け止めていた。
次第に攻撃の手が弱まってきて、それに伴い視界がぼやけていった。
涙で、前が見えなくなった。
「だ、から、言ったのに……っ。駄目って、言ったのに、なん……っ。なんでっ、怪我……っ」
「うん。……ごめん。わがまま言って、泣かせるほど心配させて」
「心配、なん、か…―――っ」
してない、と言いたかった。
言ってやりたかった。
でも、それを遮るように、結城に抱き締められた。
海堂の時とは全く違う、温かくて安心出来て、とても心地良かった。
椅子に腰を下ろしている結城の膝の上に座らせられ、少し恥ずかしくて逃げ出そうとした。
それを解っていたかのように、結城はすぐ腕に力を込めて私を拘束した。
ぎゅっ、と強く抱き締められて、体温が一気に上昇した。
うぅっ、恥ずかしいし、胸が苦しいよ……。
「俺が好きだったのってさ、ミケなんだよなー」
「……へっ」
急にそんなことを言い出すものだから、私は訳が解らなくて変な声を出してしまった。
ニコリと笑ったかと思うと、結城は髪を掻き上げるように私の顔に触れてきた。
涙越しに見える結城の顔がやけに真剣に見えて、私は目を合わせることが出来なかった。
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