第七講 気持ちの“ウラオモテ”

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 ずるい?  何が?  私、そんなずるいことばっかりしてたかな……? 「今日、俺ばっか好きだって言ってるし、行動してる。ミケにも好きって言って欲しいし、キスして欲しいんだけど」 「~~~~っ!?」  ぎょっとして、私は咄嗟に逃げ出そうとする。  だが、結城はそれを許してはくれない。  ニヤリと微笑むと、思い切り私の腕を掴んで引き寄せてきた。  勢い余った私は、そのまま結城を押し倒すような形になってしまって。  内心大パニックの私をよそに、結城は「ミケって意外と大胆」とか馬鹿なことを言ってカラカラと笑っている。  不意に、先生に言われたことが頭を過ぎる。  ……いやいやいやいやっ!  絶対ない!  それはさすがにしないって!  ぶんぶん頭を振りながら、頭を過ぎったとんでもない妄想を投げ捨てる。  僅かに口角が上がった結城は、私の首に手を回して逃げられないように固定してきた。  今まで以上に、心臓が壊れそうなほど五月蝿くなった。  何が好きで、私は今結城の顔の横に両手をついて、押し倒しているような体制でいなきゃいけないんだろう。  しかも結城、なんかニヤニヤしてるし……。  絶対、何か企んでる顔だ。 「わ、私だって、二回も好きだって言ってるもん」 「嘘だ、俺、一週間前に初めてそんなこと言われたぞ?」 「……あんたが気付かなかっただけっ」  ぺしっ、と全く痛そうじゃない音を立てながら、私は結城の胸を叩いた。  結城はニコニコとしながら僅かに首を傾げている。  さすがに、私の言った意味が解らなかったのだろう。  じーっと私のことを見つめながら、結城は不思議そうな顔になった。 「いつ?」 「……」 「ねぇ。ミケ?」 「……」 「おーい、ねーってば。早く教えてくれないと…―――」  断固として言おうとしない私に痺れを切らしたのか、結城は不意に手を伸ばしてきた。  その手が制服のリボンに触れて解こうとしていたので、私は焦って結城の手を止める。 「待っ……いっ、言う! 言うから、それは駄目っ!」 「……ちぇっ、なーんだ。残念」  おどけたようにぺろりと舌を出す結城に、私はとにかく恥ずかしくて顔を背けた。  だが、あんまり黙っているとまた結城に何かされるのではと思い、さっさと真実を告げることにした。 「……夏祭りの時、ベンチで言ったよ」 「えっ?」
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