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背は私なんかよりずっと高くて、百七十後半はあるだろうか。
肩幅も広くて、細身だがしっかりとした体格。
ちょっと華奢だけど、ごつごつしている手。
綺麗な真っ黒の髪は、襟足が少し長めだけど上の方は短めに切ってある。
サッカーをしているからか、肌は普通よりもこんがりと日焼けしていて、実に健康的だ。
「なに、見てんの?」
はっとした時には既に遅く、結城は不思議そうな目を私に向けていた。
「え、や、ハハ。なんでもない」
「ふーん」
なんだ、聞いてこないのか。
よかっ…―――。
「……なんて、言ってあげると思った? で、なんで俺のこと見てたの?」
思わず、結城を見上げている私の顔が引きつるのが解った。
面白がっているのか、彼は不敵な笑みを浮かべている。
私は無性に苛立ちを感じたが、この距離間の所為かそれを正面からぶつける気にはなれなかった。
「……あんたってさ、モテてるでしょ」
「は? いや、別に……そうでもないと思うけど」
私の意外な質問に、結城は不意を突かれたように目を少しあちこちに動かしながら答えた。
この質問には、私自身も少し驚いていたのだけれど。
「俺、運動馬鹿ってよく言われるからさ。その通り運動以外は駄目っていうか、理数が苦手過ぎてやばいんだよ。まぁ、国語は平気だけど。だからさ、少なくともそういう俺も知っていて好きだって言ってくれてる奴って少ないんだよな」
「ふーん……じゃあ、付き合うんなら自分の良い所も悪い所も受け入れてくれる人がいいってこと?」
「まぁ、そんな感じかな」
幼げに笑ってみせる結城は、その視線を前に移して遠くを見据えた。
「……榎本はさ、俺のこと嫌いでしょ」
「は? ……そんなこと言われても、男は誰とか特に関係なく嫌いだから。あんたがどうとかいうのもないよ」
「うわ、それってなんか悲しいな。俺は……」
其処まで言うと、結城はそのまま口を閉じてしまった。
その顔は「口を滑らせてしまった」というような、少し気まずそうな顔をしていた。
「なに?」
「や、別に……。なんでもない」
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