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説教に近いような長ったらしいホームルームが終了し、私達はようやく解放されて放課後の雑談に花を咲かせていた。
「それにしても、小夏(こなつ)って本当に結城君と仲良いわよねぇ」
友人の一言に、私は不愉快だと言わんばかりに眉をしかめてみせた。
「何処が。ただ言い合いしてるだけじゃん」
「でも、ケンカするほど仲が良いっていうでしょ? もしかして、結城君って小夏のこと好きなのかもよ?」
楽しそうにうきうきしながら話している友人に、私はますます顔をしかめてじっと睨むように見据えた。
それにようやくお怒り度合いを察知して、静かに表情をいつもの状態に戻した。
それを見て私もすぐ顔を元に戻し、何事も無かったように帰宅準備を始める。
「もぉ、小夏はなんでそうなのかしら? 笑ったらすごく可愛いのに」
「それを学校のアイドル、綾咲琴音(あやさきことね)さんが言いますかね?」
「何それぇ、そんなこと無いわよぉ。小夏だって後輩の子とか先輩にも、しっかりしていて安心するお姉さんみたいだって人気なのよ?」
「どうなんだかね」
可愛らしく否定しながら話をすり替えようとする友人の琴音に、私は全く信じていないというような素っ気ない声で答えた。
彼女は学校内でも一、二位を争うアイドルのように可愛い美少女だ。
ここの学校は中高一貫の為、高校一年生の私達にも後輩はいる。
高等部だけでなく中等部でも絶大な人気を誇っている彼女は、本物の学校のアイドルでありマドンナだった。
穏やかで優しい性格が拍車を掛けて、年々その人気を高めていた。
いつも自分とは真反対だと思うが、だからといって友達であることには変わりはない。
だから私は、彼女を誇りに思いながら今まで過ごしてきた。
ただ一つ問題があるとすれば、恋愛についてやたらと突っ込んでくることくらいだろう。
「榎本(えのもと)!」
ついさっき言い合っていた声が、私の名前を呼んだ。
思わず溜め息と共に、再び眉間に微かなしわが寄った気がする。
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