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「チッ、あんたか……。で、私に何か用?」
「ちょっと待て。その言い方はないんじゃないか? いくら俺のことを嫌ってるからって、其処まであからさまにしなくても……」
「うるさい。あからさまってことは判り易いんだからいいでしょ」
普段通り無関心に言うと、結城はやはりむくれてじっと私のことを睨んでいた。
いや、睨むというよりも視線で何かを訴えようとしているようにも思える。
「あぁ、こんなこと言ってる場合じゃないんだった。榎本、ちょっと頼みたいことがあるんだ」
「私に? これは一体どういう風の吹き回し?」
「うるせー。なんだっていいだろ? ほら、早く来てくれよ」
「ちょっ」
放してよ、と叫びそうになった。
でも今までに見たことが無いくらい真面目な顔をして急いでいるようだった為、私は何とか堪えて無言で引き摺られた。
その間にも異色コンビが一緒に歩いていると生徒達の視線を浴びて逃げ出したくなったが、何だかそれすらも面倒臭くなっていた。
私はこの時、思った。
私にとっては周囲の目よりも、自分のやる気や面倒かどうかの方が重要なのだろうと。
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