第一講 磁石のような二人

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「それは解るけど、なんであえて“二番目”を選ぶ必要があるの? 何ならいっそ、一番頭の良い奴に教えを乞えばいいじゃん」 「いや、それは無理だ。榎本はちょっと風当たりがきついだけだけど、学年一位の伎崎(さえざき)は性格が歪んでて受け付けてもくれないし……。俺、あいつは嫌いだ」  既に伎崎には振られた後だったらしい。  結城は当時のことを思い出したのか眉間にしわを寄せ、言葉に恨みを乗せて吐き出した。  私も何度か伎崎と話したことはあるが、どうも自分の力に溺れている感が否めない。  一言で言うなら、奴は天狗だ。  だがその天狗の鼻にヒビを入れたのが、恐らく私なのだろう。  学年別のテストの成績順位表を見に行った時、見覚えのない男子生徒に因縁をつけられたことがある。  今思えば、あれは伎崎のひがみだったのだろう。 「それは奇遇だ、私もあいつは気に食わない。けど、だからといってあんたに同情して勉強を教えるほど、私はあんたのことも好きじゃない」 「そ、其処を何とかっ、頼むよ!」 「嫌だ、絶対に嫌。なんで私があんたの為に時間を割かなきゃいけないの?」  それから十分くらいは、この会話が延々と繰り返された。  時々頭にきて手が出そうになる衝動を何とか押し殺し、私は頑固に意見を変えなかった。  それは結城も同じだ。  だから十分もの間、同じ会話をリピートするように繰り返しているのだ。 「だから、何度も言うけど私は…―――」 「ちょっと待った。……榎本にとってのメリットだって、勿論あるんだ」 「……どんな?」  私にとってのメリットと言われ、反抗の手を少しだけ緩めた。  それにほっとしたのか、結城は一息吐いてから改めて話し始めた。 「男嫌いの克服になる」 「……」  こいつは馬鹿なのか?  それとも私にこれ以上の不快感を抱かせたいが為に、わざと言っているのか?  そう思わずにはいられなかった。  私は不愉快さを露わにしながら、沈黙という名の怒りを伝えるツールを最大限に活用した。  それはなかなかに効果的で、結城はすぐに選択肢を間違えたことを悟ったのか真っ青になっていった。 「私はね、昔から男っていう生き物が嫌いだった。これは一生どうにかなる問題じゃない。根本的に男の性質やらが変わらない限り、ね。だからどうあんたが頑張っても、私の男嫌いがなくなることはないから」
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