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「…昇進ですか?」
「ああ」
朝、職場(城)について上司である俺たちの隊長から告げられた第一声は「昇進だ」だった。
それも心なしかイライラしているようにも聞こえた。
「俺の首を取りに来たとかじゃなくて…?」
「疑い深い奴だな。この通りちゃんと任命書もある」
ポンと軽く手渡される正騎士として認めるということが長ったらしく書かれた紙。
ただの紙と侮ることなかれ。
これ一枚で人生が変わるとも言われていて只の平民からしたら金貨よりも価値のあるものだ。
これを手にいれるために貴族の坊っちゃんも訓練学校に入るようなものなのにも関わらず、まともな学もろくにない俺が手にいれる。
ニヤリと意図せずに口がつり上がり、にやけてしまう。
それも一瞬だけだった。
絶対に何か裏があるはずだ。
そう思うと力関係だけなら負けない自信があるが、染み付いた質は治らないのかじっとりと冷たい汗が出始める。
いくら豚とはいえ、貴族の護衛をフルボッコにした上にその貴族自身にも思いっきりやったんだから昇進なんていう俺に都合の良い終わり方をするはずがないじゃないか。
「それとお前の転属も決まったよ。ドルムノーラ第十一師団将軍様のところにまで出頭せよとのことだ。あ、俺よりも階級が上だから敬語の方がいいのか……?」
考え出す隊長殿はどうでもいい。
やっぱりなんか来やがったよ。
只で済むとは思ってませんでしたよ。
はぁ。
不快だ。
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