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「いないのですか?いないのですね」
碓氷さんの言い方は冷たい感じで怖い。
「私じゃない。私はやってないわ」
尚も拒否の言葉を発する早瀬さん。
「困りましたね。正直に話してくれないと……。あなたが作ったという証拠があるんですよ?」
早瀬さんは黙り込んだ。
「碓氷。こんな所で何してるんだ」
そこへ副社長様登場。
これも作戦に入っていたのだがタイミングよすぎる登場にばれないかとヒヤヒヤした。
ブッと声がして目を向けると山下さんが笑いを堪えている。
いやいやその気持ちは解るけど……。
私はそっちでもばれないかヒヤヒヤだ。
「奥田くん。私じゃないわ」
課長に縋るように側に駆け寄る早瀬さん。
課長はそれを無視して碓氷さんに話しかける。
「何があった」
碓氷さんは課長に経緯を話し出した。
話終えると課長は早瀬さんに向かって言った。
「早瀬がやったのか?」
「私じゃないわ。本当よ」
「でもお前以外不可能なんだろう。松本と岡は俺の元部下だ。仲が良いのはよく知っている。松本が親友を裏切るはずがない」
課長の声はその場にいる人を凍らせる程の威力を持っていた。
「なぜこんな事をした」
「……。奥田くんが……こんな子と付き合ってるからじゃない!!」
早瀬さんはそう叫んだ。
誰もが驚いた顔をする。
私だって驚いた。まさかこんな皆の前で言うなんて……。
「ちょっ……」
私が話そうとすると碓氷さんに止められた。
どうして?って顔を碓氷さんに向ける。
碓氷さんはニコッと私に微笑んだ。
何か考えがあるのだろう。
私は黙って見守る事にした。
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