傷心

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仕事が終わり私は副社長室へ向かった。 まだ沢山の社員が残っているので細心の注意を払ってだ。 あれから早瀬さんが帰ってくる事はなかった。 だからとても気になる。 副社長室には碓氷さんと千恵もいた。 「課長。早瀬さんはどうなったんですか?」 私は入って直ぐにその質問をした。 「今日は帰らせた」 そう言って課長は冷蔵庫からビールを取り出した。 缶を開けようとした時、私はそのビールを取り上げる。 「ちゃんと説明してくれるまでダメ」 そう言って缶を碓氷さんに手渡した。 「いいじゃねーかよ。仕事終わりの一杯なんだから」 「まだ残って仕事してる社員も沢山いるんですよ。トップがだらけてどうするんですか!」 「美由様の言う通りですよ。副社長」 碓氷さんが私の味方をしてくれた。 「わぁーったよ。とりあえず座れ」 課長に促され私達3人は応接セットに腰を降ろした。 「早瀬は写真を拾ったと言っている」 「えっ?」 ひよりには見せてもらったと言っていた。 「それは違います」 千恵が言った。 「解ってる。美由から話は聞いてたし。だが早瀬は拾ったの一点張りだった」 「バックには誰が?」 「自分で考えた事だと言っていた」 嘘だ。嘘ばっかり。 「沢田さんの事は聞かなかったんですか?」 「変に沢田を持ち出したら何かあるのかと勘ぐられる節があるからな。まだ兄弟だと知られる訳にはいかない」 確かにそうだけど……。 「結局早瀬さんからは何も聞き出せなかったって事ですよね」 千恵が冷たい声で言う。 「岡の事は全部自分でやったと認めた」 「早瀬さんはどうなるんですか?」 私が聞くと「ん?」っと不思議な顔で課長が私を見た。
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