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「一生向きませんけど」
もうこのやり取りも何回しただろう。
それに私は強引に帰れとは言わない。
なぜだか解らないが……。
「持久戦だな」
竹内さんは苦笑いしながら言った。
「まぁ俺に心が向いてくれたら嬉しいけどね。でもその前にひよりちゃんの心が穏やかになればいいと思ってさ」
穏やか?
「色々あってひよりちゃん心が疲れてるでしょ?一人で悩んで傷ついて……。そんなひよりちゃんはカッコいいと思うけど君は女の子なんだよ。
俺から見たらか弱い心の優しい女の子」
「何言ってるんですか?」
突然言われて動揺してしまう。
「そんなひよりちゃんの心の支えになりたいんだよね。彼氏っていうポジションじゃなくてもいいから」
この時美由が言っていた事を思い出した。
『課長の周りに集まる人って皆それぞれ個性的だけど根本的に一緒なんだよね。気持ちが優しいの』
これは副社長と山下さんとの間で気持ちが揺れ動いていた時に美由が言った言葉。
なぜか急にそれを思い出した。
「ん?どうしたの?」
私が黙り込んだので竹内さんが声をかけてきた。
ってか近くない?
いつの間にか竹内さんは私に顔を近づけていた。
「ちょっと……離れて下さいよ」
私はグイッと竹内さんの体を押した。
「やっぱり……。彼氏のポジションの方がいいな」
竹内さんはニコッと笑いながら言った。
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