偶然の恐怖?

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玄関まで送って私が帰ろうとすると女性はお礼にお茶でもいかがですかと言ってきた。 どうしよう……。 知らない人の部屋に入るのはちょっと怖い。 「結構です。体大事にして下さい」 そう言って帰ろうとしたが女性に腕を掴まれた。 「こんなに親切にしていただいたのにこのまま帰すなんて出来ません。少しでいいですから」 さっきまで苦しそうにしていたのに薬が効いているのか元気になった女性はグイグイと腕を引っ張る。 とはいえさっきは本当に苦しそうにしていた。 また何かあったら後味も悪い。 それに私の母親と同じぐらいのその女性。 この強引さ誰かに似てる……。 あ!蜜兎さん。 そう思ったら何だか警戒心が解けた。 「少しだけなら」 強引さに負けた私は女性に引っ張られた状態で部屋の中に入った。 「楽にしてて下さいね。今お茶入れますから」 そう言って女性はキッチンへ入っていく。 私はその隙に課長に連絡を入れた。 今は外出先なのでSPの人はついていない。 後で迎えに来てもらわないといけないからだ。 私は簡単に事情を伝えると覚えていたマンション名を伝える。 課長は一言こう言った。 ”何があっても警戒心だけは忘れるな”と 私はさっき薄れた警戒心を取り戻すと姿勢を正した。 「あらあら……楽にしてって言ったのに」 私を見た女性がお盆を持ってリビングに入って来た。 「本当にありがとうね。出掛ける時気をつけてはいたんだけど……」 女性は私にお礼を言った。 「いいえ。心臓ですか?」 「そうなの。あまり丈夫じゃなくって薬が手放せない状態なのよ。お仕事の途中だったんでしょ?本当にごめんなさいね」 「いいえ。上司には話してありますから」 たわいもない話が続く。
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