31733人が本棚に入れています
本棚に追加
「まさかあんたがうちにいるなんて……。偶然に感謝だな」
「近づかないで!」
もうこうなったら怯んじゃダメだ。
「そんなにビビんなくていいよ。今日は休戦だ」
えっ?
沢田さんにとっては願ってもないチャンスなはずなのに休戦?
意外な言葉に私は驚いた。
まぁそのチャンスを生かしてくれない事に感謝はしてるけど……。
「母親……。もう知ってると思うけど心臓が悪いんだ。最近になって更に悪化してるみたいで発作もたびたび……。偶然とはいえあんたに助けてもらって本当に感謝してる」
沢田さん……。お母さんが大好きなんだ……。
「私じゃなくても誰だって苦しんでる人がいたら助けますよ。私は当然の事をしただけです」
沢田さんは私の顔を見てため息を吐いた。
「あんたって本当に肝が座ってんな。普通この状況で何があっても言い訳できないのに……」
「確かに沢田さんは私にとって敵です。ひよりの事だって本当は沢田さんが仕組んだ事だって疑ってます」
「ふーん。ただのお人よしじゃないんだ」
「やっぱり沢田さんが?」
「だとしたら?」
沢田さんがジッと私を見る。私も目を逸らさず言った。
「だとしたら、一生許しません」
あはははは。
突然沢田さんが笑い出した。
「あんたはその一生許さない奴と今こうして一緒にいるわけだ」
沢田さんは笑いながら言った。
最初のコメントを投稿しよう!