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お昼を過ぎた頃、私達は私の実家に到着した。
「まぁいらっしゃい」
出迎えてくれたのは母。
「ただいま」
私は久しぶりの実家に足を踏み入れた。
奥の座敷に父が胡坐をかいて座っていた。
テーブルには懐かしい母の手料理が並んでいる。
「早く座りなさい」
父に言われ私と課長は案内された席に座った。
母も父の隣に腰を下ろす。
暫くどちらとも口を開かない。沈黙が続く。
何ともいえない空気が部屋を包む。
「お父さん。お母さん」
沈黙を破ったのは課長だった。
声をかけられた二人の目線が課長へ向けられる。
すっごく私は手に汗をかいていた。
「今日は忙しい中お時間をいただきありがとうございます」
課長が丁寧に言葉を発する。
「今日伺ったのはお二人に大事なお話があったからです」
これから課長が何を言うのか両親は解っているだろう。
ピーンと張りつめた空気が流れた。
「お二人には前に美由さんとお付き合いをさせていただいてる事を話しておりましたが今日はお二人にお願いがあってお伺いいたしました」
課長が言葉を切るとギュッと私の手を握った。
その行動で課長が緊張しているのが伝わってくる。
いつも凛としている課長が……。
「娘さんと……美由さんとの結婚を認めていただきたい。美由さんの一生を私に預けていただけないでしょうか?」
課長が頭を下げる。
それに続けて私も頭を下げた。
「まぁ!」
歓喜の声を上げたのは母だった。
「美由。良かったじゃない。こんな素敵な人が旦那さんになるなんて。ねぇお父さん?」
母に話しかけられた父は何も言葉を発しない。
急に不安になってきた。
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