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「もうお父さんったら黙っちゃって!あんなにさっきまではしゃいでたくせに」
母が父の肩をバシッと叩く。
「お前は黙ってなさい」
父がピシャリと母を制した。父の威圧感に母も口を噤む。
「美由」
「はっはい!」
父に名前を呼ばれ姿勢を正す。
「お前はどうなんだ」
父は私の気持ちを聞いているのだ。
「私は……私も貴史さんと結婚したいと思ってます。色々あったけど貴史さんはいつも私を守ってくれた。だから今度は私が貴史さんを支えたいと思ってる」
私が課長を見ると課長は優しく微笑んだ。
「きっと貴史さんと一緒なら幸せになれる。だって彼は私の運命の人だから」
私の言葉を黙って聞いていた父が突然立ち上がった。
もしかして課長が殴られるのかと心配したがその心配は無用だった。
「貴史君。ちょっと付き合ってもらうよ」
父が課長を促す。
「ちょっとどこ行くの?」
課長が立ち上がったと同時に私も立ち上がる。
「心配はいらん。ちょっと飲みに行くだけだ」
「飲みにって……今日車で来てるのよ。明日仕……」
私が話終わる前に課長が私の前に立った。
「お父さん。お伴させてもらいます」
「貴史さん。今日中に帰れなく……」
課長が振り向いて口に人差し指を立てた。
そうされてしまったら私は何も言えなくなる。
私が呆然としている間に父と課長は部屋を出て行った。
「美由。いつまでボーっとしてるの」
母が呆れた顔で私を見ていた。
「お父さん達はしばらく帰ってこないわよ。だからこれ食べちゃいましょ」
母がテーブルを指さす。その上にはまだ手を付けてない料理が並んでいた。
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