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母は少し寂しげだった。だがその表情は一瞬ですぐに戻る。
「予感はあったのよ。あんた達が一緒になるんじゃないかってね」
「えっ?どうして……?」
「親の勘よ」
母は笑顔だった。
「貴史さんが付き合う事になりましたって報告しに来てくれた時、ああやっぱりって思ったもの」
課長……付き合う報告までしたんだ。
「でもまさか自分の娘が日本トップ企業の御曹司の娘と結婚するなんてあんたが生まれた時には想像もしてなかったけどね」
「もしかして心配?」
私は聞いた。
「当たり前でしょ?ちゃんと貴史さんの妻としてあんたがやっていけるかどうか。……でも大丈夫でしょ。貴史さんが一緒なら。
……手を離しちゃだめよ」
「うん」
私は力強く頷いた。
「あんたなら大丈夫よ。何があっても乗り越えていけるわ。運命の人なんでしょ?その人と一緒なら何だって出来るわ」
さてっと……と言って母が立ち上がった。
「お父さん達だけずるいじゃない?」
そう言って母はサイドボードからおちょことお酒を取り出した。
「そのお酒……」
お父さんが大事にしてるお酒じゃなかったけ?
たしかめちゃくちゃ高いお酒だって言ってたような……。
「今日は特別。お父さんも許してくれるわよ」
ニコニコしながら言う母に私もつられる。
それに私も飲んでみたかったしね。
「では色々なりそめ聞いちゃおうかな」
ニヤッとした母に苦笑いをしつつ私たちはおちょこを合わせた。
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