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「……話がそれてしまったが……」
お義父さんが手に持っていた酒を一気に飲み干した。
「俺が言いたいのはだ、時々でいい。美由を思いっきり甘やかしてやってくれ。大切にしてくれるのは解ってる。だが男には仕事を優先にする時があるだろう。あいつはきっと君には我儘を言わない。だから……」
「解っています」
俺はお義父さんの言葉を遮って言った。
「お義父さんの言う通り私は将来企業のトップに立つ人間です。奥田財閥に生まれた時から決められてきた道でした。それが嫌で逃げていた時期もありましたがその時に出会ったのが彼女だったんです。
ただの部下だった彼女に興味を持ち、そして惹かれた。私が奥田財閥に戻る気になったのも彼女の存在があったからです」
そう俺がルーク商事を辞め、奥田物産に戻ったのは……中途半端な自分をあいつに見せたくなかったからだ。
あいつの告白を受けなかったのはこんなかっこ悪い自分を見せたくなかったから。
立派な自分に……一人前になったら迎えに行こうと思っていた。
だが……。
あいつは俺に告白するために会社に乗り込んできた。
そんなあいつを突き放すなんて出来る訳がないだろ。そして気が付いた。
やっぱり俺にはあいつが……美由が必要だという事に。
美由は俺の背中をいつも押してくれていた。たぶん本人は気が付いてないだろうが、俺の原動力は美由がいてこそなんだ。
「きっと彼女は気が付いてないと思いますが彼女が思ってるよりも何億倍も彼女を愛しています」
美由のお義父さんの前でなんてこっぱずかしい事を言っているんだと思いつつも俺は自分の気持ちを話した。
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