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お義父さんは酒の入った瓶を俺に傾ける。
「んっ」
お義父さんが促す。それに従って俺はコップを差し出した。
「たまにはうちに顔を出しなさい。その時はまた付き合ってくれ」
どうやら俺の気持ちが伝わったらしい。ホッと胸を撫で下ろし注いでもらった酒を飲んだ。
「うちは女しかいないからな。こうして男同士愚痴でも話しながら酒でも飲もう。もう君は俺の息子だからな」
「はい」
こうして俺とお義父さんと一緒に深夜まで酒を飲み明かした。
「もう家に着きましたからね」
「ん……まだ飲みたりないぞ」
すっかり酔ってしまったお義父さんを支え美由のいる家に着いた。
もう深夜の1時を過ぎている。さすがに寝ているだろうと思いお義父さんに声をかけた。
「お義父さん、鍵持ってますか?」
「鍵……鍵かぁ?たしかここに……」
お義父さんはフラフラしながらポケットに手を突っ込んだ。
だがなかなかお目当ての鍵が出てこないらしい。
すると玄関に明かりがついた。
出てきたのは美由の母親だった。
「まぁお父さんったらこんなに飲んで。ごめんなさいね貴史さん」
「いいえ」
俺は玄関の方に目を向けるが美由の姿がない。
「ふふっ。美由ならもう寝ちゃったのよ。そんなガッカリしないで」
「別にガッカリは……」
どうやらお義母さんにはバレバレだったようだ。
「ついさっきまで起きてたんだけどね。ウトウトしてたから寝かせたわ。ほんと子供の頃と変わらないのよねー」
俺とお義母さんはお義父さんを支えながら家に入った。
「お父さんはこのままでいいから貴史さんはお風呂に入ってきなさい。お父さんのだけどパジャマ置いてあるから」
サッパリしたい気分だったのでお言葉に甘える事にした。
うちよりも狭い浴槽に入る。そして実感する。
お義父さんに話した事は偽りはない。もう後には引けない。
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