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メイドの方が温かいコーヒーを運んできた。
その香りで落ち着かなかった心がホッとする。
「親父は?」
課長がお母様にお父様について聞いた。
「先ほどまでいたんだけど急に仕事の電話が入って今書斎にいるわ」
お父様の事を聞いてまた緊張が走る。
少しだけコーヒーを持つ手が震えた。
「美由ちゃん緊張してる?」
私の様子に気が付いた蜜兎さんが声をかけてくれた。
「大丈夫です」
上手く微笑んで答えたつもりだったけど緊張した顔はバレバレだったようだ。
「そうよね。今まで散々反対されてたんだもの。苦手意識が抜けないわよね」
ズバリと言い当てられ苦笑いを返すのが精いっぱいだった。
「心配すんな。俺がいる」
課長に頭をポンポンと叩かれ少しだけ体の力が抜けた。
きっと課長は知らないだろう。無意識にやっているであろう課長のその行為が私をどんなに心を落ち着かせるなんて……。
そんな事を思っていると急に廊下が騒がしくなった。
するとガチャリと扉が開き「待たせてすまなかったね」と言いながらお父様が入っていた。
お父様は自分の所定位置であろう席に座るとすぐさまコーヒーが運ばれそれを一口飲む。
そのスムーズ過ぎる動作に私はただ見ているだけだった。
「早速だが……」
お父様がカップをテーブルに置き私を見た。
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