出会い

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 私とあの人との出会いは、ありきたりなもんよ。あえて語るようなもんじゃないって、言ってるじゃない。  はぁ、そうね。まあ、あの人との事を語るには、あの日の事は忘れちゃいけないわね。  良い? 本当に大した話じゃないんだから、期待しないでよ。  私、あの日は一人で居たんだ。友達何人かと来てたんだけど、みんなお酒飲んで騒ぎはじめたから一人になったんだ。だって、宴会に来たんじゃなくて祭りを楽しみに来てたんだもん。地元だし、田舎だし、女一人で見てたって大した危険はないしね。  屋台が所狭しと並んでるだけで、見慣れた場所が知らない所に思えるから、お祭りは好きなんだよね。お祭りじゃなくても食べられる物がほとんどだけど、こういう場所だからか、それとも目の前で作ってるせいか、ついつい食べちゃうんだよね。  クレープから、かき氷、フライドポテトにおでん、トロピカルジュースと来てフランクフルト。歩きながら食べてるせいか、満腹感がないのが不思議だよね。え? 私だけ?  いや、そんな話じゃないよ。あの人の話をするんだった。そうだよ、うん。私大食いじゃないもん。だから笑わないでって。真面目に話すから! もう。  えーっと、そうそう。あの人もね、一人でお祭りに来てたんだ。なんでだったかな? あの人あんまり喋らないから、言わなかったのかもしれないし、とりあえず、忘れちゃった。第一、そんなのどうでも良いでしょ? 私とあの人の話なんだから。
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