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水沢海人には書きたい本があった。
それはたった一人の女性を笑顔にするための本だ。
海人がこの夢を抱いたのはまだ小さい頃のことでほとんど思いつきのようなものだった。
だから今ではその夢も薄れ、見失ってしまったけれど、海人の根底ではいつでもその夢が光輝いている。
内容はどんなに稚拙だろうが、どんなに綺麗事や絵空事に溢れていようがかまわない。
ただ見たことのないほど輝かしい笑顔で自分の本を読む彼女の姿が、見たかった。
だから海人は本を書く。
そして、許されるのであればこうも願う。
──いつかその先に、彼女と二人だけのストーリーを書こう。
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