ブログ小説『妬み』

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「ほら、運動会の予行練習」 (運動会……手……) 「発表会の時だって」 (……って、旦那のこと?!) 話がよく見えない。 うちの幼稚園は、急な坂の頂上にあるから 夫と二人の時は、私の手を引っぱってもらっていたけれど。 「今も、授業参観、一緒に行ってる?」 「う、うん」 夫は、女性ばかりの部署を転々としてきたせいか、平日有休を取りやすいから。 「大切にされてる」 「まあ……ね」 彼女は、強い視線を私から外して、最後の珈琲に口をつけた。 「……羨ましかった」 私は、その横顔を眺めるしかなかった。 息子の学年で一番、綺麗なママ。 元スチュワーデスだけあって、リーダーシップを柔らな配慮でくるんだ物腰は PTAでも、人気があった。 でも、寂しい女の顔。 「私、あや……」 「一次会、終わりにしまーす! 二次会、行く人、手ぇ上げて!」 絞り出した言葉は、幹事の一声に、重なって消えた。 私もダブル幹事だったと思い出して、慌てて、相方にゴメンの仕草を送る。 「帰っちゃう人で、タクシー使う人!」 と、私もざわめきに対抗して、声を張り上げた。
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