1章‐メビウスの輪

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それは【精霊】と呼ばれる運命から生まれた生き物だった。 元々 運命がみえていた神は人間にも運命がみえるものを渡そうと精霊を与えたのだ。 運命がみえるようになった人間がまずしたこと。 それは運命を覆そうとすることだった。 だがそれはいくら頑張っても精霊にみせてもらった運命通りになった。 誰一人として運命を覆した者はいなかった。 こうして運命に導かれた人間は三つの国となり、運命通りの生活を送った。 精霊がいるからといって全てがみえるわけではなかった。 神が人間の生きる意欲に影響がでない程度に見せるように精霊の力を調整したのだ。 一人に一つの精霊が憑いた。 彼らは言葉を発することはなく頭のなかにイメージを送りこむことだけだった。 飲み食いもせず憑いた人間の周りをふわふわと浮いているだけ。 憑いた人間が死ぬと精霊も静かに霧のように消えた。 逆に生まれた赤ん坊には臍の緒が切られた瞬間、精霊は現れるのだ。
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