1章‐メビウスの輪

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______________ ロイ歴0198年 タイジュの国。 家の裏で木剣を振る青年の姿が一つ。 「はっ!せいっ!やっ!はぁっ! ・・・ふう。今朝はこのくらいで終わるか。」 青年が木剣を下ろすとほぼ同時に声がかかる。 「ハルトー!ご飯よー!」 「はーい!」 母親の声に青年・・・ハルトは返事をして家に上がる。 居間に行くといつもとは違った朝食が用意されている。 日の暖かな春。今日はハルトの18歳の誕生日である。 それと同時にハルトがアサイラル王国の首都へと旅立つ日でもある。 「・・・本当に行くの?後悔はしない?」 いつもより少し豪華な朝食の途中、ハルトの母『サクラ』が口を開いた。 ハルトはゆっくりと、自らに確認するように答える。 「・・・うん。俺は行く。俺が生まれたときにはもういなかったけど 父さんと同じ、誇り高い騎士になりたいから。」 ハルトの眼はまっすぐ母の眼をとらえていた。 朝食を終え、首都へと向かう馬車にハルトは乗り込む。 ハルトは一言だけ母へと告げ村を去る。 馬車が小さくなった道を見たサクラは言う。 「『いってきます』って言ったんだから、ちゃんと・・・ 帰ってきなさいよ。」 ______________ 馬車は一路、首都へと向かう。
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