1章‐メビウスの輪

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森は暗かった。多くの木によって太陽の光がさえぎられ温度もそこはかとなくぬるい。 さほどよくない視界の中で山賊らに襲われぬよう気を払う。 必要があれば枝を断ち、葉を落とす。 静かな森にカッポカッポと馬のひづめの音とそれに伴い踏まれ砕ける落ち葉の音が響く。 「あーー。ひまだぁ。」 横でアドラのうめき声を聞きつつ周囲に気を使っていると、今までの音に加えてもうひとつ音が加わっていた。 サァァーという水の流れるような音。 「アドラ聞いてみろ、水の音がするぞ。」 目をつぶり水の音を聞き取れたのかパァと表情を輝かせ、 「お。ほんとだ、こりゃ近くに泉があるな。探そうぜ!」 「アクティブだな。この精霊。」 どんだけイレギュラーなんだよ。 まぁ、時間はそうたたずに小さな泉は見つかった。 馬も歩き続けで疲れているだろう。 そして「じゃ、ここで小休憩な!」というアクティブな子の懇願によって休みを取ることになった。 周りの風景とは違い木の葉による妨害を受けない太陽がほとんど真上に来ていた。 「森の中に小さな泉があるなんてよくあることだけど本当におきるとはね。」 ふむ、と何かちいさくうなづくと 「森のあとは小泉、そこから安部、福田、麻生、は常識だろ」 と言い放った。 「?」 何を言っているんだ?この馬鹿は。 というかメタな話はやめていただきたい。いろんなところが困るから。 持ってきた荷物の中から軽食になりそうなパンを取り出し、口にする。 ほんのりとしたやさしい甘みと軽い口当たり、香ばしい後味が魅力の沢庵サラダパン。 たくわんのちょっとした酸味も人気の秘訣だろう。 「ハルト!!周りを見ろ!」 アドラが叫ぶように注意を促す。 「うん?」 盗賊であろう集団が泉を囲うようにたっている。 「おや、気づかれちまったか」 中心的人物であろう大斧を持つ大男が茂みを出てくる。 それを見た部下のような人たちもぞろぞろと続いた。 ―しまった!囲まれた!! そう思ったときにはもう遅かった。 「うおおぉぉりゃぁああああ!」 「きぇぇえええい!!!」 勢いよく剣を振りかぶった二人の男が突っ込んできた
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