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(目目連か…。目目連なら目玉を仏から抜いていくだろうか?)
目目連というのは、目だけの妖怪で木々や襖、壁などに憑いて人を驚かす。
もちろん世間で気味悪がられているのは言うまでもない。
江戸の町では妖怪がいると信じている者も多く、宗右衛門もブルッと身体を震わせた。
「夜中に橋の袂で何か見た輩が出ればな…。妖怪だか人間だか判明するんだが…」
そんな会話をしていた矢先、店内にいた火消しの男が近付いて来た。
「旦那、夜中に橋の向かい側なら…女と会いましたぜ?」
『何!?』
二人は男を椅子に座らせ、話を聞く事にした。
「あの日は酔った寅蔵を送って帰ったんで、帰りが遅くなったんです。そしたら橋の所にそりゃあもう別嬪の女が立ってましてね。箱を手渡して来て『これを橋の向こう側の袂にいる者に渡して欲しい。ただ決して中身を見たり詮索したりしないで欲しい』って言うんで、橋の袂にいた別の娘に渡して帰ったんでさぁ。」
女の顔を思い出したのか嬉しそうに語る男に、宗右衛門は気になった事を尋ねた。
「箱の中身は何だったんだ?」
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