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ハチが驚いて声をあげると、近くの茶店に居た老人が呟いた。
「……目玉しゃぶりか。」
宗右衛門とハチは老人に近づき、先程の言葉の意味を尋ねてみた。
老人は笑顔で宗右衛門達に教えてくれた。
「昔、近江の国の唐橋に現れたと言われる妖怪でな。…人間離れした美しさの女子が小箱を手渡し、袂の者に渡して貰うんじゃ。途中で中身を見たり、行き過ぎたりすると、目玉を抜かれる。」
ハチは身震いしながら老人の話を聞いていた。
「箱の中身は何なんだ?」
宗右衛門が老人に尋ねると、老人は目を伏せながらゆっくりと語ってくれた。
「箱の中身は…被害にあった者たちの目玉が入っているらしい。……まぁ伝承に過ぎんが…。」
「…爺さん有難う。…ハチ!行くぞ!」
宗右衛門は急に立ち上がり、すたすたと町中へ向かって歩き出した。
「親分…妖怪の仕業なら坊さんに任せた方が良いんじゃないですか?」
「妖怪だろうが何だろうが、頼まれた仕事を途中で放り投げたとなれば、江戸の男が廃るだろ?…もう二度とこんな被害が起きねぇようにするのも、俺達の仕事だしな。」
ハチは宗右衛門の言葉に感慨を受けながら後を付いていった。
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