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中学3年の勇太がいつの間にか、そんな先の事まで考えていようとは……。
しかも、漁師になって祖父母の面倒をみたいとは……。
余命を覚悟している達也にとって、一番気掛かりだったのが残された祖父母の事である。
そんな父の思いを知ってか知らでか、中学3年の息子が考えていた。
感激のあまり、達也は目頭を押さえた。
「勇太、ありがとう。勇太が漁師になるって言った事が嬉しいよ。高校は水産高校がいいと思う。大学の水産学部で実験や研究したいんなら東高でもいいけど。お母さん、おじいちゃんと相談して決めなさい」
「うん、でも、僕、お姉ちゃんみたいに頭良くないから大学に行く自信ないし、水産高校に行って漁師になった方がいいかなと思ってる」
「うん、そうだな。勇太が決めて相談したらいい」
それから二人は、いつものようにサッカーや釣り談義へと移行する。
年齢や体格に比べて幼なかった勇太が、父の入院以来、立派な大山家の跡取り息子へと確実に成長していた。
そして、祖父と父達也のDNAをしっかりと受け継いでいる勇太であった。
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