入院

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「あらっ、課長、憂うつな顔して、どうしちゃったんです。もしかして、二日酔いですかぁ?」 いつも朝から元気をくれる融資窓口の少しお茶目な女子行員。 「あは、そうか…? 月曜はみんな、こんな顔だろう。さぁ、体操、体操」 ラジオ体操の軽快な音楽が銀行フロアに流れ始める。 融資課長の大山達也は、数日前から腰と背中にかけて激しい痛みを感じていた。 年度末決算の多忙さからくる疲労性腰痛、単純に一過性のものと一蹴し市販の痛み止めを服用するだけだった。 3月下旬という季節にも関わらず大山の額には汗が滲み、体操で動かす腰部に異常な痛みが出現している。 そして、上体を後方にそらす運動に移った時だ。 『ドーン』 重たい物がフロアに落ちたような鈍い音、周辺に地響きと感じられる振動が轟いた。 近くにいたテラー係の女子行員が条件反射のように、 「課長!」 と、発した悲痛な叫び声が一瞬にして銀行内に響き渡る。
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