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救急隊が入店。手際よく毛布を使い、巨漢の融資課長を簡単にストレッチャーに載せ搬送にかかる。
隊員らの機敏、かつ、流れるような行動を安堵の表情で見守っている行員、そして、興味本位で救急隊と一緒に入店した通行人。
すると、名誉挽回とばかりに支店長が指示を出す。
「小林次長、大山課長に付き添って下さい。他は仕事に戻りなさい」
この支店長は若干35歳、いわゆるキャリア組である。
京大卒の本社採用、将来の中枢幹部候補として、現場経験を踏むために赴任している。
片や次長は90年代に始まったバブル崩壊で危機に陥った地方銀行出身者である。
金融機関の合併統合、その荒波に飲み込まれ、メガバンクに吸収された立場の社員となる。
このまま勤務しても、支店長を2か所経験し55歳(銀行は民間の中では退職が早期)で定年を迎えることだろう。
彼は大卒採用後、各地の支店に赴任し現場経験も積んできた人物。
47歳で管理職の次長に就いてからも、施設管理者として各種講習を受講し危機管理能力に長けていた。
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