犬猿の幼なじみ

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今じゃ、顔を合わせれば喧嘩しかしないあたしたちだけど何も昔からこうだったわけじゃない。 むしろ、昔は今みたいな日々が訪れるなんて信じれないくらいすっごい仲良しだったんだ。 小学生の頃なんか、仲良く手つないで帰ってたくらい。 …なのに、中学生に上がってから何の前触れもなく悠斗は冷たくなった。 同時に、その頃から急激にモテ始めた悠斗はいつも女の子に囲まれてにこにこ笑ってて。 あたしには冷たいくせに、他の女の子には優しい。 最初のうちは、あたしが何か怒らせるようなことしたのかもって思ったけど、どれだけ考えても全く心当たりが浮かばなくって。 だから、あの日あたしは直接悠斗に聞きに行ったんだ。 「ねぇ、何であたしにだけ冷たいの!?」 あたしが何か怒らせるようなことをしたなら、ちゃんと謝りたい。 謝るから、だから、前みたいにー… 中学生の頃、放課後に悠斗の家に押しかけてそう詰め寄ったあたしを悠斗は冷めた瞳で一瞥するとすぐに顔を反らして。 「…お前見てると、むかつくんだよ」 そう、吐き捨てた。 「つーか、帰れよ。もう二度と勝手に上がってくんな」 冷めた目をした悠斗は面倒くさそうにそう言って。あたしは背中を押されて乱暴に部屋から追い出された。 あれ以来、毎日のように通ってた悠斗の部屋には一度も行ってない。 とにかくあの日わかったのは、悠斗はあたしが嫌いっていう辛すぎる事実だけ。  
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