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「よっ!真世坊。今日も相変わらずチッチャイままだね」
そう、声を掛けて来たのは同期ではあるが2つ年上の玉石充。
毎日、日課のように真世をからかう。
二週間ほどの研修期間を終えた真世は、この観光ホテルのお土産物売り場担当を任されている。
担当としては、そうなのだが、シフトにより、客用の朝食バイキングのホールを任されることもある。
暇をみては人にちょっかいばかりかけてくる玉石充は、この観光ホテルのフロントを任されており、四年制大学を卒業して、この四月から入社したばかりの新米従業員だ。
充は真世をからかうのが楽しいのか面白いのか分からないが、暇を見てはワザワザ、この土産物売り場に足を運んで来てはこうしてちょっかいばかりを掛けて来る。
後に束ねてある髪の毛を引っ張ってきたり、頭を押さえつけて来たりと、やる事がかなり小学生染みている。
「背なんて急に伸びませんよ。昨日も同じ事を言いませんでしたか?それに、名前に坊ってつけるの止めて下さい」
レジ内で土産物の菓子製造卸業者からの細かい入荷表を書き入れながら、いつものように反撃をする。
すると、何か企んだ表情を浮かべて、同じ様にレジ内に入って来て真世の隣で耳打ちするように
「じゃあ……真世って呼んでいい?」
「イヤです。その呼び方もイヤです。ちゃんと姓で呼んで下さい」
声を目一杯低くトーンを落として
「草野君。これでいいか?」
馴れ馴れしく肩に腕を回してきた。それを振り払いながら
「その言い方、女なら誰にでもセクハラを繰り返す中年オヤジみたいですけど。女子従業員から、いっぱい陰口を叩かれているオヤジですよ。玉石さんの先も知れていますね。セクハラ中年オヤジ。あー。イヤだ。イヤだ。誰にも相手にされず、一人孤独に死んでいくんです。あー。可哀相」
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