充との出会い

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宿泊客が玄関に入ると直ぐに目を見張るほどの豪華なフロントやロビーが用意されている。 それと同じように、中で手配するフロント係りも容姿を重視するものなのだ。 客に高揚感を与えるのは間違いない。このホテルを選んで良かったという、満足感さえ与えれば、ホテル側としては成功しているのだ。 自分を知っているのか、知らないのかよく分からない男だった。 「真世ちゃん。夫婦漫才出来そうよ。喧嘩ばっかしているけど、二人、お似合いじゃない」 同じ土産物売り場の今年、50歳になるベテランパート従業員の竹中増枝が真世たちの会話を聞いて、そう、からかってきた。 「似合ってません」 「そうかな? 似合っていると思うけど。それに、いい子じゃないの。玉石君は。今時の若い子にすれば、珍しく、しっかり機転は利くし仕事をこなしている子に見えるけど」 増枝さんはかなり充を気に入っている。 増枝は褒めるように、容姿だけではなく、機転がかなり利くらしい。 客からのクレームの交わし方や、治め方が、物腰が柔らかいせいか、とても上手く、酔った客に対しての受け応えも余裕ある態度で応じるらしい。 そう言った面でも、フロントを任された要因なのだろう。
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