充との出会い

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日本各地から訪れる宿泊客は、それはそれで趣があるとか、珍しいとか、この観光ホテルに宿泊する条件が付けば、この連絡ボートに乗り放題だとか、新鮮な海の幸を使った料理が美味しいとか、それなりの魅力はあるようで、意外にリピーターが多い。 そして、温泉が湧き出るこのホテルには、太平洋を一望できる露天風呂施設がある。 それを、ホテルのホームページで、夕焼けに染まった水平線を見ながらの入浴シーンの写真を掲載している為か、若いOLたちが楽しみに宿泊するケースもある。 ただ、太平洋を一望できる露天風呂となると、その海域を漁船が何隻も通る場合があり、漁船が通り過ぎるまで風呂から出られなかったと、怒るどころか、旅の思い出として(旅の恥はかき捨て)はしゃいだ様子がよく見られるが、真世からすれば不思議でならない。 充などの若い男性従業員は、自分の休日には漁師と仲良くなって漁船に乗船させて貰って、あの露天風呂辺りを何度も往復して貰おうなどと、犯罪染みた計画を立てている者もいるが、その度に女性従業員から白い眼で見られている。 充はフロント内で澄ました営業用スマイルを浮かべて、若いOLたちや女子大生たちの目を惹いているようだが、裏に回れば、女露天風呂の覗きの計画を立てている不届き者なのだ。 充曰く、女風呂乱入が世の男性の夢なのだそうだ。中学の頃は真剣に、透明人間になれる薬を開発できないかと、いつも考えていたそうだ。 透明人間になりたい理由が女風呂乱入の為だとは、女性からは考えられない発想で、意味不明だ。
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