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自慢するほどのお金持ちが通う高校でも、短大でも無かったのだが、増枝にとってはそう映るらしい。
「玉石君からすれば、デートに誘う絶好のチャンスじゃない?」
「デート?そんなはずないじゃないですか。玉石さんとは甘いラブラブした関係になれる筈ないです。漫才なら出来るかもしれないですけど」
「いや、それでいいんじゃない。漫才から始まる恋だってあるから」
そう言って増枝が、フンフンと今、流行りのKポップを鼻歌で歌いながら、土産売り場のホールを出て行った。
増枝がいなくなり、
「漫才からか……」
そうため息をついた。
実は、増枝にはだまっていたが、真世は次の非番の日に、充から誘いを受けていた。
昨日、仕事を終え、私服に着替え女子更衣室から出てくる真世を充が呼び止めてきた。
「ねえ。真世坊。今度の非番の日、暇?いや、暇だろ?」
ラフなチェック柄のブラウスにジーンズを着た充は、何が楽しいのかニコニコ笑っている。
従業員専用の更衣室や控室や会議室が横一列の並んでいる通路の前。ホテル内とは完全に隔離されたプライベートな場所だった。
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