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「お昼からなら、大丈夫ですが、玉石さんに付き合うって、どこにですか?」
少し、その切れ長の目を上に逸らして何かを考えたように、
「あのさ、真世坊とこの親父さんって釣りとかする?」
「釣りですか? 海が近いので、釣り、やりますよ」
そう返事をすると、充が目を見開いてキラキラした笑顔を浮かべて
「じゃあさ……網、網とか持ってないか?魚をすくう網」
「網ですか? 」
父親の正和が趣味でやっている釣り道具一式を頭に浮かべて見た。
投げ釣り用の竿にサビキ釣り用に竿にイカ釣り用の竿。
たくさんの細々とした針やウキが入った道具箱。
ついでに一本じゃあダメなのかと、愚痴る晴美の言葉も思い出した。
その一式の中に、確かに大きな網もあった気がした。
「あったと思います」
「じゃあ、それ、貸して貰えるように頼んでくれない?」
「いいですけど」
「じゃあ、今度の非番、一時過ぎに家に向かえに行くからさ。今度、自宅どこか教えてよ」
それだけ言って真世の肩をポンと叩いて先に通路を駆けて行った。
釣り用の網を調達してのデート。
漫才の小道具に出て来ても、オシャレなデート風景には、あまり見られない小道具だった。
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