プロローグ

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限度。 子供を持ったことのない伯母には分からないのだ。 アパートの広さなど、来たことも無いのだから、この大きな箱の置き場所に困っているなど、知りもしないのだ。 そんな伯母には何度か振り回されたこともある。 私立の女子中学に入って間もない頃、仲の良かった佐倉玲美と少しの間、ケンカした時期があった。ケンカの内容など、どうでもいいことだった。 真世が別の友達に、玲美の愚痴をポロリと零したことが玲美の耳に入り、ケンカになったのだ。 それが切っ掛けで、喋ることも挨拶すら交わすことがなく、その期間が、一カ月近くも続いて、学校に通うのがイヤになり、一日だけずる休みをしたことがあった。 そのずる休みをした日に、たまたま家に来ていた伯母が、母から少しだけ真世の話しを聞いて、偶然、伯母と同級生だった当時の担任に言い付けたのだ。 自分の姪が友達とケンカをして、学校に行きたくないと言っていると。 真世とすれば、当然悪いのは愚痴を零した真世のほうで、機会を窺っては、玲美に謝罪しようと思っていた矢先だったので、担任に言いつけられるのは本意では無かった。 こちらから言い付けたとなると、相手を否定することになり、そう聞いた担任は、否は玲美にあるかのように感じたようで、いきなり次の日、玲美を職員室に呼び付けたのだ。 「先生が怒ったように玲美を呼び出していた」 その場に居合わせた、クラスの誰かに、そう聞いた真世は、無我夢中で職員室に飛び込んだ。 担任から、まだ、叱られていなかった玲美は血相を変えた真世の乱入に驚いていた。 担任には、自分が悪かったんだと、言いわけをして、こと無きを得て、玲美にもその場で謝ることが出来た。 小さなことではあるが、もし、玲美が担任に叱られた後なら、真世は、玲美と友達ではいられなくなっていたかも知れない。何にでも敏感で、微妙な思春期だったのだから。 それこそ、親友を失って、登校拒否を起こしていたかも知れない。
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