ミステリーは突然に

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そんなわけで駅に着いたのは午後7時前。 先輩を呼び出して近くの食堂で夕食をとり、春の宵の風とほころび始めた桜の香りを楽しみながら、ブラブラと歩いてアパートに辿り着いたのが9時頃。 それからあれこれいじって復旧させたパソコンで、寛司先輩は自分のホームページの日記を更新。 オレはそれを後ろから眺めながらあれこれと談笑しつつ、途中で買ってきためいめい好みのビールで晩酌。 寝たのは多分午前2時頃だったろう。 こんなかんじで学生時代から先輩はなにかにつけてオレを呼び出すし、オレもおしかける。 遊びに行けば泊めてもらうのは当たり前で、周りには“週末婚のようだ”と笑われるが、断じて“そういう関係”ではない。 お互いに週末を束縛してくれる彼女がいない…という悲しい現実もあるが。 で、今朝。 つまり4月1日日曜日の午前8時頃、勝手知ったる他人の家の朝刊を取りに行ったところでブツ発見。 こんなものに出くわさなければ、今頃オレはここで優雅に朝刊を読んでいたし、先輩はヒーローに夢中でいられたはずなのだが。 いったい誰が、何の目的でチョコを投函したのか。 季節はずれのバレンタインデーでもあるまいし。 しかしこの後オレたちは、謎がそれだけでは終わらないことを知ってしまう。
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