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「ジュン、なんか言った?」
「いや、なんつーか…茶色いものを玄関に置くと、何かいいことでもあるのかな、って」
「さあ、聞いたことないね」
相変わらずテレビの方を向いたまま、薄い頬をぽりぽりと掻きながら全くつれない返事。
「じゃあ質問を変えます。“独身者用賃貸マンションにおけるチョコレートの保管には、玄関の新聞および郵便受けが最適である”との学説に心当たりは!?」
大きく息を吸い込んで一息にまくしたてると、そこで寛司先輩は初めてこちらに興味を抱いてくれたらしい。
濃いめの眉の間に皺を寄せて、まじまじとオレを見上げる。
朝っぱらから隙のない端正な顔立ち。
スクエアフレームの眼鏡が似合う涼やかな眼差しで見つめれば、大概の女子はどーにかできるんじゃないかと思うが、はっきり言ってこの人に女の子は寄り付かない。
理由はいくつかあるが、まず職業柄出会いがない。
さらにおそらく本人もあまり恋愛に興味がない。
そしてなにより…
「ジュン、仕事のし過ぎで言語中枢に問題が生じたんじゃないか?」
この難解かつローテンションな毒舌に晒されてみろ。
普通の女の子は逃げ出す。
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