0人が本棚に入れています
本棚に追加
「いらっしゃい!1名様?」
フレンドリーに話しかけてきたのは、愛嬌のあるおばちゃんだった。
俺は、周りを見渡しながらおどおどと口を開いた。
「あの、小野寺ススムと申します…。えっと…今日ここで僕の誕生日会をしてくださると手紙をいただいたので来たんですけど…。」
「誕生会?ちょっと待っててね。」
首をかしげながら、おばちゃんは厨房へと去った。
「予約?今日は1件も入ってないよ!!」
ガラガラ声のおじちゃんがそう言いながら厨房から出てきた。
「兄ちゃん!悪いけど場所間違えたんじゃないか?今日は誕生会や予約は入ってないんだけどね~。」
人の良さそうなおじちゃんがそう言って、俺に笑いかけた。
俺はファンレターの写真の裏に乗ってる住所をおじちゃんに見せた。
「これって、ここの住所じゃないんですか?」
俺がそう言うと、おじちゃんは気の毒そうに俺を見つめた。
「そうだよ。でも、今日は誕生日会やるって言うような客いないよ。ここは小さい町だからみんなが顔見知りだしね。その誕生日会に招待した人の名前はわかるか?知ってる奴なら連絡しとくよ。」
おじちゃんが気を利かせてくれると、俺は気まずく思いながら口をこじ開けた。
「実は、あの…匿名で頂いた手紙で…。」
おじちゃんは、黙って気の毒そうに俺を見つめた。
こんな悪夢は高校時代以来だ。
俺は、いつも目立たず黙っていたため、いじめられっ子だったのだ。
「あいつは1週間に1回しか風呂に入らないから臭い」とか「歯磨きしてない」とか変な嘘を言いふらされたり、生徒手帳に好きな女の子の写真を入れてたら、いじめっ子に見つかり、次の日みんなが見てる前で告白させられたり、無理やり抱きつかせたり、キスさせたり。
好きだった女の子からは、嫌われてしまった。
俺の高校生活はいじめのせいで地獄だった。
「どこから来たの?」
気まずい空気を変えたのは、さっきのおばちゃんだった。
最初のコメントを投稿しよう!