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「えっ?!ちょっと待ってよ!!急に休みをとりたいって?何考えてるの?!」
髪のセットが乱れている、黒縁めがねのスーツ姿のお堅い女性が、俺をあきれたような目で見て声を荒げた。
彼女は、編集長の佐代子さん。
二人の子持ちでバツイチだ。
俺は、彼女が髪を振り乱しながら「1発屋の直木賞作家」に延々と説教をするのを、聞き流した。
「編集長、俺にも休みが必要なんです。」
俺がそう言って疲れた笑顔を見せると、編集長はまた髪を振り乱してダイナミックに怒った。
「自分が何言ってるのか分かってる?!2年間なにも書かずにアイディアさえも練らずにボーっとしてニート状態だったのに、それでも休みが必要ですって?!あんた何考えてるの?!!頭狂ったの?!!」
編集長の怒りは収まるどころか、俺が何か言うたびにヒートアップしていく。
そろそろ、編集長の顔も茹でダコになり始めていた。
目をカッと開いて、鬼のような形相で俺を憎むように睨んでいる編集長に、俺もさらに疲れた表情をめかしこんでやった。
すると、編集長はそんな俺を見てあきれたように溜息をついた。
「もう降参!あんたなんかとやりあってると、頭の血管切れてぶっ倒れそうだわ!!」
編集長がそう言うと、俺はそばにあった椅子に深く腰掛けた。
しばらく、俺と編集長の間に重たい空気が流れた。
俺は、天井を見上げて頭の後ろで手を組んでリラックスしながら背もたれにのけぞった。
編集長はイライラを静めるために煙草に火をつけた。
「一本どう?」
編集長が煙草を箱から一本出して、俺に差し出してきたが俺は煙草は吸えない。
「いや、結構です。」
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