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編集長の言葉がグサグサと俺のハートに突き刺さる。
編集長は、もう俺を見限ってるのだろうか?
冷たい言葉の数々に俺はただ黙ってうつむいた。
「あんたのこと、ずっと応援してたのは作品のファンだったから。初めてあんたの作品を読んだ時の衝撃は忘れられないわ。そのファンっていう一途な気持ちがこんな変なヒモ男を作り上げてしまったのね。私のせいよ。」
編集長が笑うと、俺は複雑な気持ちになった。
編集長は、夕日に照らされた写真立てを指で愛しそうになでた。
「私には子供がいる。父親がいない代わりに、私が養わないといけない。そんな状況に置かれてても、私は子供を家に置いたままで年中無休で仕事詰め。家族サービスなんか1度もしたことないのに、あんたなんかにマンション買い与えて着るものにも食べるものにも困らないように援助してあげて、自分の子供よりあんたを優先して大事にしてきた。だから私にも休暇が必要ね。」
俺は編集長の私生活なんか気遣ったことなどなかった。
みじんも…。
だから、余計に罪悪感を抱いてしまった。
編集長は最後に優しく俺に微笑みかけた。
「行ってらっしゃい。でも心配だから、たまには連絡してよ?いい?」
「はい。ありがとうございます。」
編集長に深々とお辞儀をして、そして会社をあとにした。
家に帰り着くと、旅に出る準備をした。
無期限の旅だ。
ファンたちが俺を待っていてくれている。
疲れ切った心と頭を癒すにはファンとの交流が必要だ。
スーツケースを手にとって、家を勢いよく出た。
そして、俺は無期限の休暇をとり、ファンレターに入っていた写真の場所へと向かったのだった。
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