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霧を払う眼鏡をかけた視界に見えた風景は、誰もが知っていて、誰もが知らないものだった
「学校……だよな、これ?」
「えぇ、ただ……」
確かにそれは学校だった。しかしそれはここにいる誰もが知らない校舎だった。彼らに取って学校と言えば八十神高校を真っ先に思い浮かべるが、どう考えても今視界に広がっているのは違う校舎だった
「とにかく、中に入ってみよう」
しばらく校舎を見上げていた鳴上だが、立ち止まっても仕方ないと考えたのか、臆する事なく足を進める
「……センセイ、待つクマ!」
しかし鳴上が一歩目を踏み出す前にクマの制止がかかる
「……!?」
クマの静止がかかった直後、校舎の入口の付近の影が蠢く。【蠢く影】はそのまま影から分離し球体になったかと思うと、模様や口を形作る。眼鼻のないそれは、侵入者達を笑うかのように唯一の器官である口角を上げる。その笑みは嘲笑か、はたまた歓喜のそれなのかは誰にも判別が付かなかった
「シャドウ!!」
【蠢く影】――シャドウを見た鳴上達は条件反射的に素早く臨戦態勢を取る
シャドウは次々に影から湧き出し、その総数はとうに十を超える数まで増えていた
「クッ……イザナギ!」
鳴上が精神を集中すると、目の前に一枚のカードが宙に浮かび上がる。鳴神がそのカードを握り潰すと、背後に【もう一人の自分】――ペルソナ・イザナギが浮かび上がった
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