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最初から、妊娠を疑っていたわけではない。
ここ最近食欲が全くなくて、気分も優れなくて、季節の変わり目で体調を崩しているのだと思っていた。
でも冷静に考えてみれば、それは全て初期兆候と呼ばれるものばかりで、むしろどうしてそれに気付かなかったのだろうかと疑問を抱くくらいだった。
「もしかして……赤ちゃん、出来たのか?」
「うん……」
「俺、父親になれるのか?」
「うん……私たち、この子の親になっちゃったんだよ。」
不安もいっぱいあるけれど、それでも嬉しい気持ちの方が圧倒的に大きかった。
私と健は家族になった。
しかしどんなに愛し合っていても、血の繋がりだけはない関係。
けれどもこの赤ちゃんは、私と健をひとつに結び付けてくれる大切な愛の証だ。
私と健の血を受け継いだ、確かな命。
まだ全く膨らみのないお腹に、健の大きな手が触れる。
そして何度も優しく撫でてくれた。
「自信ないけど……頑張らないとな。最高の家族になれるように。」
「私も……頑張る。」
「でも、ひとりで頑張るんじゃなくて……ふたりで頑張らないと意味ないからな? ここにいるのは、俺と姫希の子供なんだから。」
「……はい。」
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