12120人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「痛っ……。」
その時、足の小指のあたりに激痛が走った。
あまりの痛さに、そばにあった壁にもたれかかって靴を脱いでみる。
すると、慣れないヒールを長時間履いていたせいか、そこは赤く腫れて傷になっていた。
どうしよう……。
傷テープ、持っていないや。
取り敢えず、何故か鞄の中に入っていた、未使用のウエットティッシュを開けて患部を拭う。
めちゃくちゃ沁みて、涙が出そうに痛かった。
何か……凄く惨めな気分。
ここにいる全ての人は皆、幸せで満ちているのに、どうして私だけこんな痛い想いをしているのだろう。
どんどんと増してくる痛みに、僅かな苛立ちとネガティブな考えが浮かんでくる。
そんな私の視界に、誰かが手を差し伸べてくるのが見えた。
「大丈夫?」
「えっ……?」
その声の主を見上げると……そこには、穏やかな目で私を見つめている、ひとりの男性が立っていた。
「靴擦れだね。」
「へっ?」
「少しだけ歩ける? あっちにソファーあるから。」
「あ、はい。」
.
最初のコメントを投稿しよう!